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大船渡市_a0335202_13001447.jpg
c川口雅幸/アルファポリス・東映アニメーション


「虹色ほたる」…とても素敵なアニメ映画を観たことを、以前ブログで紹介しました。

 作り手の熱い熱い思いが結晶したこの作品を、改めて多くの方々の胸にお届けする道がないものか考えて来ましたが、まずはこの映画の原作者川口さんとお会いすることから始めてみようと思ったのでした。

 出版社を通してご了解をいただき、先日お会いしてきました。

 川口さんがお住まいの岩手県大船渡市は、三陸沿岸にひらいた港町、リアス式海岸が深く陸に切れ込んだ天然の良港に恵まれ、かつては遠洋漁業の基地としても栄えた歴史を持つおだやかな町でした。

 私がまだ子どもだった頃、大船渡には叔父一家が生活していて、夏休み家族で泊まりに行った時の記憶がありありと残っています。

 子どもの目に映った当時のこの町のにぎわい、叔父が連れて行ってくれた映画館で観た吉永小百合主演の「赤い蕾と白い花」、そして町の寿司屋さんでご馳走になったお寿司のまるでほっぺたが落ちてしまう程のおいしさ…。

 大船渡は数々の思い出を私の胸に刻んだ町でもありました。

 しかしながら、そんな大船渡はその姿を一変させていました。

 かつてそこにあった町並みはその姿を消して、新たな町づくりを担うダンプカーが縦横に走り回る…あの大船渡はそんな悲しい姿に変わり果てていました。

 暗澹たる思いでお訪ねしたご自宅で川口さんは、それでもさわやかなお顔に満面の笑みを浮かべて私を迎えて下さいました。

 ごあいさつの後、話題は当たり前の様にあの日のことに…。

 川口さんご一家は、長年にわたって時計、宝石、メガネを扱う商店を営んでいらっしゃいました。


 あの日まで、その店は大船渡駅前にあったと…。

 そして、3月11日…押し寄せた波の壁は、そのお店を完全に破壊して、更にそこにあった数多くの商品も奪って行きました。

 幸い、川口さんのご家族は九死に一生を得て、その後高台のこの地に何とかお店を再開した…こんなお話を川口さんは淡々と私に語って下さいました。

 川口さんの処女作となった「虹色ほたる」は、<夏休み>に寄せた少年時代の川口さんの憧憬にも似た思いがモチーフになった作品でした。

 あの年の夏休み、主人公が訪れたのは、もはや「ダムの底に沈んだはずの村」…。

 そして、この物語は、そこにあった筈の、地域コミュニティや輝く程の自然、人々のつつましやかな、それでも心豊かな生活のさまざまを語ってゆきました。

 そして出版…更にはアニメ映画化…まるで夢物語の様に順調に進んできたプロジェクトでしたが、映画完成の翌年、川口さんがお住まいの町と人々の営みは、ドラマに語られる村と同様に、水のそこに消えてしまったのでした。

 何とも不思議な運命に彩られることになったこのアニメーション映画…。

 それだからこそ…あの日から5年を経た今…もう一度、この作品に命を吹き込んで、川口さんの思いのつまった大船渡の町から全国へお届けしてみたい…。

 そんな思いを胸に大きく膨らませたこの度の旅でした。

 この町にもう一度、人の営みを蘇らせる力となるために…。 


by cinema-tohoku | 2016-07-14 13:02 | 映画 | Comments(1)

虹色ほたる_a0335202_09420953.jpg
c川口雅幸/アルファポリス・東映アニメーション

 「虹色ほたる」...こんな美しい題名のアニメーション映画が震災の翌年にあたる2012年に完成、全国公開がされていました。

 思いを込めて製作にあたったのは、これまでも数々の名作を世に送って来た日本アニメ界の老舗東映アニメーション。

 常には、「ワンピース」や「プリキュア」等、東映番線にのせるアニメを製作していましたが、日本にアニメーション文化の新たな地平を拓くべく、大きなそして誇り高い「志」を持ってこの作品の製作にあたったのでした。

 「ちえりとチェリー」の製作委員会のメンバーに加わったことがきっかけでお会いすることとなった東映アニメのA氏から、とにかく是非とも観て欲しい...、こんなご要望を受けて東映アニメの試写室でこの作品と出会うことになりました。

 今は亡き父との思い出を辿って訪れた、ダムの底に「沈んだ筈」の村...。

 そこで少年は、かけがえのない一ヶ月を過ごすこととなったのです。

 大きな、そして美しく輝く自然...心やさしき人々が織り成す地域コミュニティ...熱い友情...そして淡い恋...。

 日本はかくも美しい自然に彩られた国であったことを久しぶりに思い起こされる見事な美術表現の中にこの物語は語られて行きました。

 そして見終わった私の胸は、大きな感動に包まれたのでした。

 経済的な成長のみが語られ、人に対しての許容量も小さくなってしまったかの如き現代社会に生きる私に、この作品は一服の清涼剤となって、かつて私たちの国が持っていた数々の美しいものを私に語ってくれたのでした。

 終了後、A氏とプロデューサーのU氏と懇談となりました。

 この映画の製作にあたっては、あえてCGを排除し、全てを手作業の絵を連ねて作り上げたと...。

 作品の中に描かれる乱舞するホタルの表現さえもが...。

 久し振りに創り手たちの熱い思いの結晶に触れた思いで東映アニメを後にしたのでした。

 さて...いかにしてこの作品を多くの方々にお届け出来るか...そんな思いを頭に巡らせながら...。


by cinema-tohoku | 2016-05-18 09:43 | 映画 | Comments(1)