出雲市駅に降り立った時、不思議な空の大きさを感じたのは、駅前のホテルを除くなら街の中にほとんど大きなビルが無いせいだったのかも知れません。
街の中心部には心地よい川が流れ、その瀬音が耳にやさしく響き、人の心を安らかにさせる素晴らしい街並みが続く…初めて訪れた出雲市はそんな顔で私を迎えてくれました。
この街に生まれて、この街に育つなら、いつの間にかその心も安らかな、そしておおらかなものになるのでは…そんなことも感じさせる神話の街でありました。
この度遠路、出雲にまで足を運んで来たのは、又又「じんじん」でした。
米子市で「じんじん」が上映された折、ご覧になった読書活動を続けていらっしゃる一人の女性から出雲市での上映を実現したい…こんなお電話があったのはもう一年も前のことでした。
しかしながら、その時の私の素直な感想は、え~出雲市…。
とは云え、とにかくお会いせねば…岡山まで行った折に足を伸ばしてお会いして、やっと今日の試写会にたどり着いたのでした。
試写会には20名の市民の方々がお集まりになり、上映終了後の感想会では映画を思い出し、又自分の子どもを振り返り思わず言葉につまる…そんな方々が続出の誠に感動的な、そして熱い思いに包まれた試写会となりました。
やっぱり出雲の住民は、安らかでそしてピュアなお心をお持ちでいらっしゃいました。
幸い、全員の思いで出雲市での上映会が決まり、これで全国47都道府県全てでの上映が実現することとなったのでした。
それにしても、ひたすらに経済性と効率性が求められる現代社会で、何と超非効率な仕事の典型だと思いながら、やはりこの作品に込めた作り手たちの思いをしっかりとお伝えすることの大切さを又学んだ試写会でした。
振り返ってみれば「文化」や「子育て」は効率性とはまさに相反する概念。
丁寧に時間もかけながら、人の心と手によって織りなされるものであるべき…などと自らを納得させて帰路についたのでした。
私のふるさと岩手県からは、矢巾町の中学2年生の悲しい叫びが伝わってきました。
まだまだ「じんじん」に仕事をさせなければ…。

