9月26日、台風15号による豪雨は静岡県を襲いました。
そして、各地にも甚大な被害の爪跡を刻むことになりました。
この日の朝、私はテレビのニュースでこの報道を見て、胸がしめつけられる思いにされました。
そこには、静岡市の山あいの温泉、油山温泉元湯館の無残な被害の様子が映し出されていたのでした。
私たちが心を込めて製作した映画「エクレール・お菓子放浪記」がありました。
製作のきっかけは、この作品の原作になった「お菓子放浪記」を手に取ったことでした。
お会いした原作者の西村滋先生は、笑顔の素敵なとてもやさしい方でした。
西村先生は、この映画化をとても喜んで下さり、西村先生を取りまくお仲間の方々共々、大きな製作支援の輪をつくって下さいました。
そして映画は完成・・・3月10に行われた東京での完成披露試写会には、西村先生とお仲間の方々においでいただき、この映画は全国発信のスタートラインに立ったところでした。
しかしながら、その翌日に東北一帯を襲った津波は、この作品に寄せた私の夢をたちまちのうちに破壊したかと思えたのでした。
全国上映の道を絶たれた私は、絶望の淵に立たされることになったのでした。
そんな私を、西村先生とお仲間の方々はあたたかく支え、全力をあげて上映再開の道を探って下さいました。
そんな沢山のやさしさに支えられて、この映画は<東日本大震災復興支援映画>として、一歩ずつ全国に上映の輪を拡げて行ったのでした。
そんな時、西村先生からお誘いをいただきました。
毎年、西村先生とお仲間の方々で行っている、西村先生を囲む懇親会に招待したい。
鳥居さんを励ましたいので・・・。
お誘いに甘えて訪れたのが、会場となった油山温泉元湯館でした。
山あいの心あたたまる宿、そしてそこで交わされた交流は私の胸を熱くさせ、頬から流れる涙を止めることは出来ませんでした。
それ以来、毎年行われる元湯館での懇親会には参加を続けておりました。
その元湯館を大災害が襲い、テレビから流れる映像には、旅館の中をまるで滝の様な激流が流れるさまが映し出されていました。
元湯館の再興は・・・やさしかった女将さんのお顔が目に浮かび、胸がふさがれる思いにさせられたのでした。
そしてその翌日は、安倍元総理の国葬の日でした。
国民の過半の反対を押し切って開催されたこの空虚な儀式・・・。
しかもその実施には、莫大な国費が注ぎ込まれていたのです。
突然襲った大災害に見舞われ、道を失おうとしている国民を一顧だにせずに進むこの国の行く先は一体どこなのか…。
暗たんたる思いが胸にひろがった2日間でした。

西村先生がお亡くなりの後も、元湯館での懇親会が