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        阿寒湖

 いつの間にか、北の地には秋が訪れていました。
 「あの日のオルガン」を携えて、久し振りの北海道、空港でレンタカーを借りて、一路道東へ…。
 何と、目に映る森の木々の葉は赤や黄色に色づいて、北の大地は秋まっ盛りの風情でした。
 社会に目をやるなら暗い話題ばかり…、国の未来に漠たる不安も覚える毎日でしたが、自然の営みは変わらずに四季の巡りを重ねていることに、安堵の思いにもさせられました。
 明日の釧路での試写会に間に合わないので、前日に仙台を発って、オフシーズンの安い宿を探して阿寒湖に一夜の宿をとりました。
 森の湖阿寒湖…数えれば何と52年ぶりの訪問でした。
 大学一年の夏休みに、当時〝カニ族〟と呼ばれていた流行にのって、リュックサックを背負い、ゴムサンダルを履いて20日間の北海道一人旅に出ました。
 それまでは両親の庇護のもと、ぬくぬくと育っていた私にとって、この旅は、新たな大学生活を始めるにあたっての、いささかの冒険でもありました。
 初めて泊ったユースホステルの独特の世界と、宿泊者同士の不思議な連帯感…車窓から流れる北の大地の壮大な姿…そして、ちょっとの異性との出会い…。
 その一つ一つが、私にとっては発見であり、青年の成長と自立の舞台でもあったのだとなつかしく思い返します。
 その旅の折に訪れたのが阿寒湖でした。
 あれから52年が流れていました。
 年も重ね、頭髪はすっかり白くなりましたが、52年前と変わらぬ熱き思いが、又私を阿寒湖の湖畔に立たせました。
 夕食の折の酒の酔いに誘われるようにして夜の湖畔へ…。
 振りあおげば、満天の星が私を見守っていました。
 〝子どもの命と平和〟… 今、かけがえのないこのテーマを一人でも多くの方々に・・・そんな思いを胸に刻んだ北の湖でした。
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阿寒湖に姿を映す雄阿寒湖



by cinema-tohoku | 2019-10-02 14:01 | 旅と出会い | Comments(0)