岩 手 山
昨日、北の地は今年一番の冷え込みとのこと、車窓からは初冠雪が報じられた岩手山が、秋の空を背景にすっきりとしたその姿を見せています。
岩手山・・・この山は、私にとって特別な感慨を思い起こさせる山なのです。
私の故郷、盛岡市のどこからでも望むことの出来る、岩手をまさに象徴する美しい姿の山で、古くから多くの文学や詩歌にもその姿をうたわれていました。
啄木や賢治もその作品の中にうたったこの山の姿は、それに触れた岩手県人に、故郷の包み込む様なやさしさと、遠く縄文の彼方につながる自然の巨きさを語ってくれるのかも知れません。
私もこの山に吸い寄せられる様にして、若い頃幾度にもわたって登ってきました。
初めて登った頂上から望んだ、すっきりと晴れ上がった風景の清々しさ・・・。
友と登って、下山した温泉に伸ばした足の解放感・・・。
そして、人生に行き詰って一人登った私を受け止めた、晩秋の岩手山のやさしさ・・。
この山は、その都度都度に私を育て、見守って来てくれたのでした。
あの頃から数えるなら、ずい分の時間が流れてゆきました。
そして、年を重ねた私は、それでもまだあの頃の思いをカバンに詰めて、時代と向かいあいながら苦闘しています。
故郷のおおきな、そしてやさしき数々のものに支えられながら・・・。
青森までは、赤く色づいたナナカマドの道をたどってまだしばらくのドライブです。