映画「健さん」
日本人なら誰ひとり知らぬ者はない・・・日本映画をまさに代表する名優高倉健さんを描いた初のドキュメンタリー映画です。
製作関係者から、映画製作にあたっては数々の困難な条件があったとお聞きしておりましたので、いささかの不安をかかえながらのスクリーンとの向かい合いでしたが、映画が始まるやたちまちのうちにスクリーンに吸い寄せられ、作品がエンドを打った時には熱い感動が私の胸をいっぱいにしていました。
「高齢化社会」が語られています。
この言葉が語られる時、いささかザラツイた思いにさせられるのは、この言葉の背景にある思いが見え隠れするからなのかも知れません。
“高齢者が増えて国家財政は困難に陥っている・・・まことに困ったものだ・・・”と。
ともすると「高齢化社会」は社会の負の要因として語られているのが通例なのではないでしょうか。
しかし、本来高齢者達は、今日の日本の社会を作り上げてきた貢献者であり、その内にはいまだ大きな知恵も力も備わっています。
そう考えた時、本来あり得べき「高齢化社会」は、高齢者がその最後の瞬間まで自らの力を発揮し、精一杯に社会と向かい合って生きることなのではないかと思えるのです。
そしてそう思った時、高倉健は、その最後の時まで背筋をのばして時代と向かい合い、美しく生き抜いた一人の高齢者たる日本人であったことに気付かされたのでした。
この作品を見終わった私は、天国から健さんが“ガンバリましょうよ!”こんな声と共に私の背をやさしくたたいてくれた・・・そんな思いにさせられたのでした。
無思想な、そして垂れ流しの様な映画がスクリーンを占めている日本映画の現状・・・。
久しぶりに熱い映画に触れ、思わず胸がいっぱいになった「健さん」との出会いでした。