冬山遊び

私がまだ青年でありました頃、仲間たちと、そして時には一人で山を歩いて来ました。
大きな大きな山々と向かい合って、必死の思いで歩を進め、たどり着いた頂上での憩いの時…。
時にはやさしい、そして時には厳しい表情をみせる山は、その時々に私の心を支え、叱咤も与えてくれました。
そんな山にも年を重ねるに従って足が遠のいていました。
そして、年と共に筋力も落ちて来ていることにいささかの危機感も覚えた時、無理のない山に再度身を置く様になっていました。
低山や里山を2~3時間かけて巡る山歩きは、仕事でクタクタになった私の心を大きく開放し、体だけではない心のリフレッシュにも大きな役割を果たして来ていました。
そんな山歩きで一番通った山が泉ヶ岳、仙台市北部に位置し、標高1000m余の美しい山です。
春、夏、秋…とそれぞれに異なる表情を見せる山を、時には山腹の周遊、そして時には頂上まで…、特に目標も決めずに数々のコースを歩いて来ました。
そして冬…。
今年、思い立って冬の泉ヶ岳にも行ってみようと思ったのは、いまだ衰えない好奇心のせいだったのかも知れません。
そこで問題となったのは足元の装備。
かつて使っていた山靴は、その後の私の足の変型で使用出来ず。
無雪期用に新たに購入した山用の靴は、靴高が低くスパッツを付けられませんでした。
えい!それならと、迷うことなく物置から引っ張り出して来た長靴をはいて雪の山に向かいました。
やわらかな靴底の長靴は、雪面にステップを刻みにくく、ともすれば滑る足元に気を配りながらも、久しぶりの白一色の山のふところに抱かれて楽しい一時を過ごして来ました。
それでも、時折会う人たちの装備は皆いかにも立派なもの…
60過ぎの年寄りが長靴をはいてヨレヨレのジャンパーを羽織って歩く姿は、まるで都会のホームレスが冬の山に迷い込んだ様な…。
それでも負けずに冬山遊びをして来た私でありました。
いつかお金が溜まったらしっかりとした山靴を買いたい…、などと思いながら…。
