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岩手県大槌町

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全てが奪われた大槌町


 「ちえりとチェリー」の被災地での上映準備もいよいよ佳境に入り、先日は岩手県釜石市、大槌町、山田町を巡って参りました。

 震災以降この地を訪れるのはこれが初めてのこと、いささかの緊張を胸にしながらの三陸沿岸への旅でした。

 このあたりは以前は、何度も何度も車で通った道...しかしながら車窓から流れる懐かしい風景は釜石の町に入るや一変...そして釜石から峠を超えて隣町大槌町を一望に出来る高台に立ち、そこから大槌のかつての市街地に入ったときはまさに息をのむ思いでした。

 海に向かってひらけた、かつての大槌町は既にその姿を消し、全く何もなくなってしまった平坦な大地の上を、かさ上げ工事のダンプカーが土ぼこりを巻き上げながら走るだけ...。

 町には人の姿もなく、あの人のにぎわいに溢れていた大槌町はその姿を一変させていました。

 町の中心部に唯一残る旧役場庁舎の前に立ち、改めて5年前の大惨禍の凄まじさにただただ両の手を合わせるばかりでした。

 あの日から間もなく5年...5年経ってもこの姿とは...。

 こんな変わり果てた町の姿に日々接する町民の思いに心を寄せた時、もはや我慢も限界を超え、町での再起をあきらめ、他の地に移り住む選択をした町民の思いが胸に迫って来る思いでした。

 こんな膨大な、そして長期にわたるかさ上げ工事ではなく、住民の日常生活に寄り添った別の町再建の道があったのではないのか...。

 そんな思いにもさせられたのでした。

 そして訪れた町役場、お忙しいお時間を割いてご面会下してさった平野町長さんは、満面の笑顔で私たちを迎えて下さいました。 

 実は、平野町長さんとは、平野さんが町職員であった頃からのお付き合い。

 映画の上映を通した町の活性化と子供たちの健やかな未来にご賛同いただき、これまでもいくつかの映画の上映に取り組んで下さった、平野さんはそんな好漢でした。

 震災以降の町の未来に、止むにやまれぬ思いで町長選に立候補し幸いご当選、一番大切な時の町政の舵取り役となったのでした。

 思わず話はあの日あの時のことに...あの時は大槌町の幹部職員が集って会議中、この中に平野さんもおいででした。

 迫り来る津波が目には見えていたのだが、いくら思い返してもあの時の音を思い起こせない...全く音の無い世界に立ち止まっていたのだと...。

 当時の町長さんを始め、貴重な幹部職員の何人かの命は奪われて行きましたが、幸い平野さんは自らの命を拾うことになったのでした。

 あの当時のことを振り返るなら今は、仲間も、そして復興に向けて一生懸命に努力する職員もいる...幸せなことですよ...、と語る平野町長さんの言葉に思わず胸が熱くなったのでした。

そして、私たちの語る「ちえりとチェリー」大槌町上映についてもその実現を約して下さいました。

 5年を経てなお、まだこの現状にある被災地への思いと、そこへの支援の手を更に重ねなければならない...そんな思いを強くした岩手県沿岸の一日でした。


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旧大槌庁舎



by cinema-tohoku | 2016-01-22 12:21 | 旅と出会い | Comments(0)