映画「つむぐもの」
福井県の古都郡越前市を舞台に、一本の映画が製作の最終盤を迎えています。
「つむぐもの」、要介護となった一人の頑固な和紙職人と、その介護にあたる韓国籍の娘との葛藤をのりこえた和解を感動的に描く作品です。
この作品で主役をつとめたのが、大ベテラン石倉三郎さん、何と映画の主役はこの作品が初めてとのことでした。
既に撮影は終了し、最後の編集段階となり、公開についての検討が幾度かにわたって重ねられてきました。
この作品でプロデューサーをつとめたM氏は、若いながらも熱き情熱をその胸にたたえた方...、人と人との心を通わせようとするこの作品の公開にあたって、その上映を都市部の劇場のみに止めず、映画館がその姿を消した小さな市にも町にも届けたい...こんな願いを携えて私に連絡をとって来て下さいました。
シナリオを読んで、その確かな視点に感銘し、非劇場分野での配給をお引き受けして、地元関係者との顔合わせのため初めて越前市を訪れました。
数々の歴史に彩られた古都は、寺社と蔵が連なる街並み...。
そして、この作品の直接の舞台となった越前和紙の里、旧今立町では1300年の歴史を誇る紙の神社が、黄色く染まった銀杏の巨木の中に見事なその姿を描き私たちを迎えてくれました。
そしてその夜、懇親を兼ねた場でお会いした越前和紙工業協同組合のI理事長さんは、いかにもおやさしそうな瞳を細めて、映画公開に向けた数々の夢も語って下さいました。
改めて見つめるなら「介護の心」は、数々の障害を乗り越えて、人と人との心を通わせようとする努力なのかも知れません。
年齢も、そして国境さえも超えて心を通わせようとするこの映画の二人の願いは、まさに「介護の心」そのものを語ろうとするものなのかも知れません。
こんな心やさしき人の願いを、これにご賛同の数多くの方々の心をつむぎながら全国に大きく育て上げてゆきたい...こんな思いを強くした北陸越前の旅でした。