若者たち
もう一つ、昔観た映画の思い出を…。
以前「春…そして旅立ち」にも書きましたが、私は1971年大学卒業の時、大きな決断をして映画の道に自らを導いて参りました。
そこにはまさに、青春なるが故の感動があり、悩みがあり、そして挫折もありました。
そして、そんな時代を共有した友もいたのでした。
私は、1967年東京の大学に入学しました。
幸い、父親の会社の子弟寮が東京にあり、入学と同時に私はこの寮の寮生となったのでした。
そしてそこには、同じ時代を生きる、同じ釜の飯を食った仲間たちもいたのでした。
ギターが得意で、一緒にいると不思議に人の心を安らかにさせたI、哲学科に籍を置き、常に時代に迷いながらも最後は天職たる教師に自らの道を拓いたF、そして一旦は大学を卒業しながらも映画への道を志して、東京の専門学校に入学したKさん…。
私たちは夜が明けるまで語り合い、登山をし、そしてそこにはいくつかの恋もありました。
そんな私たちはいつの間にか、Kさんを中心に地域に向けた映画サークルをつくるに至っていたのでした。
私たちは16mm映写機を担いで数々の映画の上映会を行い、映画を通して人と巡り合い、そしてこれまで知ることのなかった数々の世界も学んでゆきました。
そんな活動の中で巡りあった映画の一つに「若者たち」(1967年俳優座製作)がありました。
親と死に別れ、都会の片隅で肩を寄せ合って生きる5人の兄弟…。
そこには時代と向かい合う若者たちの喜びが、葛藤が、そして挫折がありました。
この作品の上映を私たちは、無謀にも松戸市民会館大ホール(1000席)を会場に取り組み、会場を満席に埋める大成功をおさめたのでした。
そして、この日スクリーンを見つめる私の目には涙が次から次へとあふれたのでした。
若者たちが押しつぶされそうになりながらも精一杯時代へと向かい合い、そこから自らの未来を切り拓こうとする姿に、私の胸は熱い感動でいっぱいになったのでした。
ちょうど卒業の年を迎え、自らの社会での道を悩みながらも探っていた私にとって、この感動は自らの人生を決める大きな契機ともなったのでした。
「君の行く道は果てしなく遠い、だのに何故歯をくいしばり…」
人の一生に影響を与える…、そんな作品をお届けしてゆきたいものです。