春…そして旅立ち
大学の卒業を目前に控えた早春のことでした。
意を決して既に就職の決まっていたある銀行への入行をお断りし、あえて不況のどん底にあった映画の世界に自分の道を拓こうとしたのは、若気のいたりだったとしてもあまりに思い切ったことであったと今でも自分の原点として思い起こすことがあります。
東京に本社を置く独立プロ映画の製作配給会社、共同映画の門をたたき、望んで東北支社での勤務に就いたのは1971年春のことでした。
あの日以来、必死になって目の前の仕事と向かい合い、42回の春が巡っては過ぎてゆきました。
そして又、新緑が目に眩しい43回目の春を迎えています。
この間の自らの歩みを振り返ってみればそれはまさに「旅」そのものでありました。
小さな「夢」と「希望」、そしてそれとは比べられない程の大きな図体の「悩み」と「挫折」をいっしょくたにカバンに詰め込んで、道なき道を拓きながら歩き続けた…それはまさに旅だったのかも知れません。
そして、そんな旅の門出に春はふさわしいのかも知れないと思えるのです。
生命が萌え出し、生命の躍動さえ感じられる春にこそ、人はこれまでのしがらみを断ち切って新たな未来に向けた旅立ちを決意するのかもしれません。
そして巡り来たあれから43回目の春に又、私は新たな旅に出ようと思っているのです。
JSNに託されたいくつかの作品をしっかりと携えて…。
人の世の幸せを夢に描きながら…。