僕がジョンと呼ばれるまで

この変わった題名の長編ドキュメンタリー作品は、より良き高齢者社会を願って製作されました。
製作を手がけた仙台放送は、東北大学の川島隆太先生と以前から報道を通して接点がございました。
そして、川島先生が開発した「脳トレ」を通して認知症を改善・予防しようとするプログラムを、アメリカオハイオ州の老人介護施設にカメラを持ち込み、「学習療法」を通して認知症を改善に導く記録としてまとめたのがこの作品でした。
完成後、全国30程の劇場で公開され、この種の作品としては異例なヒットとなりましたが、更に多くの市町村での上映を願って、JSNに全国配給のご依頼が持ち込まれて参りました。
作品を拝見して、配給をお引き受けはしたものの、当初は「学習療法」についての知識がなかったこともあり、上映は「学習療法」導入施設や医療機関内部での小規模上映をイメージしていました。
こんなイメージを一変させたのは、くもん学習療法センター方々との出会いからでした。
公文は、以前から川島先生と共同して「学習療法」をたちあげ、全国の介護施設や自治体に向けてその啓発にあたっていました。
仙台放送に連れられお会いしたくもん学習療法センターのI氏は、JSNの配給に向けた私たちの考えをお伝えするや、こんなことを私に語って下さいました。
“鳥居さん、あなたたちのやって来たことはまさに地域コミュニティの再生そのものではないか…。私たち公文も学習療法にあたって同じ考えで取り組んできた…。“
と熱く私に語ったのでした。そして
“これまで認知症は高齢化社会にとって避けて通ることの出来ないものと考えられていた。一旦認知症と診断されたなら、それは家族の破壊であり、地域社会の破壊であり、介護施設の職員の心の破壊でもある。
しかしながら、学習療法はこんな高齢化社会の未来に光を差し込ませることになった。
高齢化社会を、認知症を諦めなくて良いのだ…。これはまさに「地域コミュニティの再生」でもある…。
こんな思いで取り組んできた。“
こんなことをI氏は熱く語ってくれたのでした。
公文の方々との出会いは、私たちのこの作品に向かう姿勢を一変させることになりました。
より良き地域社会を語る地域運動として、幅広く賛同の声を結集して全国に上映の輪を拡げてみたい…。
そんな願いは
地域運動型上映の第一歩となった大分県日田市での900名を集めた素晴らしい上映から夢をひらきました。
高齢者が人として尊重され、その最後の時まで生き生きとその生を謳いあげられる地域づくりのために…。
私たちの願いは今全国に大きく拡がろうとしています。