きみはいい子

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 親による虐待や子殺し、いじめに起因する子どもたちの自殺、独居老人の孤独死、声高に自己責任を叫びながら語られる一方的中傷...、いつの間に私たちの国はこんな姿になってしまったのでしょうか。

 こんな閉塞感でいっぱいになってしまった様な現代社会に、まるで宝物の様な一本の映画が生まれました。
 「きみはいい子」原作者中脇初枝さんの世界を、呉監督が見事な演出力で映像化した作品です。
 この物語は、架空のある町に生活する何人かの人々の心の揺れ動きを織り成しながら語られてゆきます。
 地域社会の中に孤立し、心ならずも娘に手をあげてしまう母親...子どもたちの背負っている家庭の影に気づき、その子ともう一度しっかりと向かい合おうと決意する新任の教師...障害を持った子どもをかかえ、押しつぶされそうになりながらも必死に生きようとする母親...そして、たった一人で生活しながら地域をやさしく見つめる老人...。
 地域社会の崩壊が語られ、今や地域社会の基礎単位であるべき家族さえ揺らぎ始め、そこに起因する悲しい事件が毎日の様に報じられる様になってしまった現代社会に、この作品は、それでもまだ大丈夫...丁寧に人と人との心をつないでゆけば、きっと一すじの光が差し込む時がやって来ることを、やさしい言葉で私たちに語ってくれたのでした。
 高知県四万十市ご出身の原作者中脇初枝さんは、こんな言葉も語って下さいました。

“わたしは四万十川のほとりで近所の人たちから「べっぴんさん」と呼ばれながら大人になりました。
わたしがべっぴんだったからではありません。
あの時代、あの川べりの町に暮らしていた女の子たちは、みんなそう呼ばれ、近所の人たちに見守られていました。
その時はそれが当たり前のことだと思っていましたが、今になって、なんて幸せな子ども時代だったのだろうと気づきました。”

 なんと心やさしい地域社会に子どもたちが抱かれ、確信を持ってその未来に向けて育っていた時代だったのでしょうか。
今一度立ち止まって、地域社会と子どもたちの未来を語るきっかけになれば...。
「きみはいい子」は私たちの手によってもお伝えしてゆくことになりました。


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by cinema-tohoku | 2015-09-17 16:24 | 映画 | Comments(0)